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◆ 西田 在賢先生 PROFILE

西田 在賢(にしだ ざいけん) 静岡県立大学大学院 教授、同地域経営研究センター長。

西田在賢先生 医学博士、情報工学修士。専門は医療・福祉経営学、経営情報システム論。
マッキンゼー・アンド・カンパニー勤務、電子カルテ開発のベンチャー起業ののち、日仏合弁会社の経営再建の責任者を経験。自らの経験則もふまえた独自の医療経営論を展開する。 医療経済研究機構主幹、東北大学医学部助教授、ハーバード大学公衆衛生大学院リサーチフェロー、川崎医療福祉大学教授、武蔵野大学教授を経て2006年4月より現職。


著書に『医療・福祉の経営学』(薬事日報社)、『医業参謀』(薬事日報社)、『マネジドケア医療革命』(日本経済新聞社)、『医療経営革命』(共著、日経BP出版センター)、『SISに費用をかけすぎていないか』(日本能率協会マネジメントセンター)、『電脳マネジメント戦略』(かんき出版)などがある。




情報工学専攻の院生が医療経営の研究を目指したお話し


私は元々、コンピュータの技術者を目指していました。30年余り前のことです。しかし、ある講義を聴いたことから、日本の病院経営に疑問を持ち、これを追い続けたところ、気が付いたら、東京都や静岡県の地域医療対策協議会の席に医療関係の代表の方々と並んで座っていました。

このコラムはコンピュータ会社最大手の富士通の関連ホームページに載るとのことですから、読者の皆さんのご関心のほどを念頭に置いて、医療経営と情報工学の話題を交えた自分(途中)史のお話しをしてみたいと思います。



医療の広告規制緩和と病医院経営

医療に関する広告は、かつては、医業は収益事業でないことや、客観性を欠く情報や不正確な情報から患者を保護するという観点から、医療法の第69条に「医業等に関する広告制限」を設け、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない。」と規定し、医師又は歯科医師であること、診療科名、病院の住所や電話番号、入院設備の有無などにかぎって広告に載せることを許していました。

しかし、厚生労働省を中心とした国側の施策として、患者サービスの向上を図るための情報提供を促す目的で、1992年に行われた第2次医療法改正以降2006年の第5次医療法改正に至るまで、広告規制をどんどんと緩和していきました。その結果、先にも述べたように従来は国民が誤解をしないようにと、なるべく制限された内容を知らせて、それ以外のことを勝手に広告しないようにという方針だったのが、今は逆に、医療提供体制を知らせ、内容を知ってもらうことによって、国民の医療選択権をいかに維持するかという方向に、180度転換しました。

そのようなことから、たとえば米国などの病院ではずっと以前から、手術数や患者数をホームページに載せていましたが、日本の病院でもこれを広告してよいことになっています。

ちなみに、悪評高かった医療法第69条は2007年度から削除され、第6条の中で医業等の広告として載り、広告を許可する内容もずいぶんと幅広いものに変わっています。

このような国による医療広告の規制緩和が、これからの病院や診療所の経営に影響を与えないはずがありません。



わが国の病医院経営について

医療施設の経営研究は、米国のほうが日本よりも進んでいます。ですから、米国では以前から診療所と病院の経営ではキーワードが異なる、というのが当たり前の考え方でした。そのキーワードとは、診療所は変動費事業だが、病院は固定費事業だということです。

日本でも、診療所の場合、入院ベッドを持つ有床診療所では固定費が4 割、変動費が6 割で、入院設備のない無床診療所では固定費が3 割、変動費が7 割となっています。
その一方で、病院の場合は、固定費が6 割を占め、変動費は4 割となります。

固定費事業の場合、土地、建物、設備などへの投資が大きく、人件費や医療機器の保守などの設備や施設の維持費といったような毎月決まって発生する費用が大きくなります。

そのため景気の変動に弱いという面があって経営管理も難しく、設備の稼働率や病床の回転率など、施設の利用率管理が、経営の重要な課題となります。

反対に、診療所では、個人事業主である院長の報酬は、医院管理も含めて働いた成果そのものであり、その点から変動費と見ます。そのために変動費割合が大きいわけですが、患者が少なければ収入は減るものの、支出も少なくなるため、変動費事業である診療所は、病院に比べ経営がしやすいと言えます。

このように病院と診療所では事業の性格に大きな違いがあるので、診療所から規模を拡大して病院になったら、経営管理の方法を変えなければうまくいくはずがありません。しかし、1980年代の半ばまでは、厚生省(現厚生労働省)が行なう医療経済実態調査の結果、赤字の病院が多いとなると診療報酬が引き上げられるので、病医院の経営者である医師たちは、経営管理に真剣になる必要があまりなかったのです。穿った見方をすると、当時の日本の病医院を経営していたのは厚生省だったと言えましょう。

その状況が変わるのが、1985年の第一次医療法改正です。1979年に起こった第二次オイルショックにより、わが国の経済成長が頭打ちになることが決定的となり、医療保険財政も転換を迫られました。
従来のような病医院経営者の医師たちの所得保障のような政策は見直され、医療計画を導入し、不要な病床数を制限したり、開業医の経営近代化を促す一人医療法人制度を導入しました。また、前年の1984年には、健康保険法を改正して社保本人にも負担させることを実施しました。

国民皆保険制度の財政は、徴収した保険料と患者の窓口負担では7割弱しか満たせず、3割あまりを公費投入により賄っていました。しかし、経済成長の鈍化により税収が頭打ちとなって、公費投入割合を維持するのが難しくなると予想されたことから、それまで窓口負担がなかった社保本人について、まずは1 割負担が実施され、1997 年には2 割負担に、2003年からは3 割負担にまでなり、患者負担割合が社保の家族や国保の人たちと同じになりました。こうした医療制度改革の中で、病院、診療所を経営する医師たちにも意識改革が求められるようになってきました。


そこで、近年になって注目されてきたのが「医療経営学」という研究分野と医療経営人材養成講座です。
ここでいう「医療経営学」というのは、医療事業による金儲けを研究することではありません。冒頭で説明しましたように、医療の広告規制の緩和というものをひとつとっても、国の政策が医療施設の経営に大きな影響を与えることが分かります。このことは日本に限ったことではなく、世界のいずれの国であっても、国民の健康と生命に直接的な影響を与える医療に対しては、行政が大きく介入し、それに対して医療事業は大きな影響を受けるわけです。そこで、米国ではこのような研究はHealth Policy and Management(あるいはHealth Services Management and Policy)と呼ばれる研究分野になります。その日本語訳として「医療経営学」を使っています。



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